出札担当

JRのきっぷ(マルス券)と営業制度について書きます。ついでに旅行記なんかも

新幹線と在来線は同一線路として扱うってルール①

旅客営業規則の基本中の基本である”新幹線と在来線は同一の線路として扱う”という乗車券ルール

本当に基礎の基礎なんですが、最近久しぶりに考察しようとしたら記憶があやふやになっている部分が結構あったので、復習がてらまとめました。

めちゃくちゃ長文です。

 

”新幹線と在来線を同一の線路として扱う”とはどういうことか

本当に簡単に説明すると、実際に新幹線の線路は在来線とは全く違うものが建設されているけれど、距離や運賃の計算をする際には平行に伸びている在来線と同じように扱いますよーということです。

東海道新幹線東海道本線

東北新幹線東北本線

上越新幹線高崎線上越線

みたいな感じで各新幹線に対応している在来線路線が設定されています。

詳細は以下のページで。

www.jreast.co.jp

具体的に例を挙げると

東京から仙台までの乗車券は、東北新幹線経由で買っても東北本線経由で買っても全く同じキロ数・金額(351.8キロ/6050円)となります。

そして東北本線経由の乗車券でも東北新幹線に乗れるし、またその逆も然り。

 

新幹線と在来線を別線…つまりキロ数も金額も別とすると、新幹線と在来線を乗り継ぐ際や、在来線でゆっくり旅行するつもりだったけどやっぱり新幹線で…といった予定変更の際の発券・変更が煩雑になってしまうので、同線扱いにしたようです。

 

新宿から八王子まで、特急に乗っても普通列車に乗っても同運賃であるのと同じ考え方ですね。

 

これだけ。

いやこれだけだと思いきや、”別線扱い”の特例があることで、このルールはややこしく、そして奥深いものになっています。

 

ここからが本題。

 

新幹線には、平行する在来線の通らない新幹線単独駅が存在します。

東海道新幹線新富士東北新幹線白石蔵王上越新幹線燕三条などが相当します。

こいつら(新幹線単独駅)を発着・接続駅とする場合、またこいつら(新幹線単独駅)を挟む両駅の区間内にある在来線駅を発着・接続駅とする場合は新幹線と在来線は別の扱いとする!というルールがあります。

”接続駅とする”というのは、たとえば燕三条駅で弥彦線と新幹線を乗り継ぐ場合の乗車券などです。

 

(詳細は上記のリンク先”第16条の2-2”)

 

図で見ていきましょう

私は東北在住なので東北新幹線で。

 

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福島~仙台間には白石蔵王という新幹線のみ停車の単独駅があるので、別線扱いルールが存在します。

上の図を基にいくつかの例を挙げます。

①福島→仙台の乗車券

新幹線・在来線とも同線扱い。

②福島→白石蔵王(新幹線単独駅)の乗車券

別線扱い。

③長町(新幹線単独駅を挟む両駅の区間内にある在来線駅)→福島の乗車券

別線扱い。

 

さて、”別線扱い”になんの問題があるのか。別に同一線でも別線でもかまわんじゃないかと言いたくなります。

ところが、同一線となると問題が起きてくるのです。

 

同一線とは新幹線も在来線も同じ線とみなすということでしたね。

もし新幹線と在来線が同一線のままだったとすると、長町に住んでいる人が仙台経由で白石蔵王駅に行きたい場合、長町→白石蔵王の片道乗車券が購入できなくなるのです。

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片道乗車券は同じルートを二度通らずに一筆書きで経路をなぞれる場合に発売できます。

同じ線とみなすということは同じルートを二度通ると解釈することにもなるので、東北本線東北新幹線を折り返し乗車しているとみなされて

1.長町→仙台

2.仙台→白石蔵王

という二枚の乗車券が必要になり、多くの場合は割高にもなってしまいます。

こういった不合理を救済するために別線扱いルールを設け、より短時間・低コストで新幹線を利用できるようにしています。

 

 

ちなみに

郡山~福島間には新幹線単独駅がないので別線扱いルールは存在しません。

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別線ルールが無いということは、長町~仙台~白石蔵王のようなルートでの片道乗車券が発売できないということです。

つまり、たとえば南福島に住む人が福島経由で郡山に行きたい場合

1.南福島→福島(東北本線

2.福島→郡山(東北新幹線

この二枚の乗車券が必要になります。

南福島~福島間を二度通っているとみなされるわけですね。

二枚分の運賃を払いたくなければ東北本線経由で行けと言われているのです。

 

福島を経由して新幹線を利用する場合と、東北本線でそのまま郡山まで向かう場合を比較してみると

1.南福島→福島→郡山

運賃1050円(特急券は別)、所要時間約17分(乗換え時分含めず)

2.南福島→郡山

運賃770円、所要時間約43分

と、まさに時間を取るか金をとるかの選択を迫られます。

 

もし、この区間も仙台のように別線扱いルールがあったとすると、

南福島~福島~郡山の距離は49.5キロとなるので運賃は860円で済んだはずです。

 

仙台~福島と福島~郡山では距離の長さも大きく違うことから、このような差が生まれたともいえます。

仙台の次が福島だと距離が長すぎるから白石蔵王を設けたとも考えられますね。

 

救済される場所もあれば、ある意味見捨てられてしまう場所もある。

不条理ですが、すべてを救うことはできないのでしょう・・・。

 

さて、新幹線・在来線の別線扱いについての基本は以上になります。

次回は、これをもとに「じゃあここの運賃はどうやって計算するのよ!?」という区間をいくつか取り上げていこうと思います。

書く気力があれば。